妊娠判定後の帰りの車中。
結果はまさかの陽性。来週は胎嚢確認だ。まだまだ気が抜けない。それでも…
「妊娠…したね」
「うん、妊娠…した」
「ここママ、いま妊婦さんなんだね」
「うん、私、妊婦さん」
体外受精、踏み切るのには勇気がいった。正直お金もかかった。でも採卵も受精も思ったよりずっとうまくいって、そしてなんと最初の移植で妊娠した。
うまくいってる。今までがウソみたいだ。本当にうれしい。今日は今までで最高の日だ。いや最高は言い過ぎだがベスト10には入る日だ。きっとこのまま最後までうまくいくはずだ。
当然奥さんもボクと同じだけ、いやもっともっとうれしいだろう。
ねぇ、奥さん?
「私やっぱりピックアップ障害だったのかな?」
ん!!??
「いや、まぁそうかもしれないけど…うまくいったんだからどっちでもいいじゃない」
「どっちでもよくないよ。やっぱり体外受精だったら妊娠できたってことはピックアップ障害だったってことだと思うの。次に会ったとき先生に聞いてみてくれない?」
え?なんで?なんのために?
「体外受精でうまくいったからってピックアップ障害だったとは限らないよ。そんなのどんな検査してもわからないんだし。原因は結局わからないけど、とりあえずこの方法ではうまくいくことがわかった、っていう状態なんじゃないかな。とりあえず今日はいい日なんだからもっと喜ぼうよ。もう変に悩む必要なんかないよ」
「うん…でもやっぱり聞いてほしいな」
イラッ ”(-“”-)”。
「そんな意味ないこと先生に聞きたくないよ!そんなに聞きたかったら自分で聞けば!!」
今日は今までの苦労がやっと実った日なのに。最高の日なのに。この期に及んでどうして奥さんはそんなつまらないことにこだわるんだろう。どうして自分のことをわざわざ○○障害なんて決めつけたがるんだろう。どうしてこの喜びを共有してくれないんだろう。
ボクの気持ちはイライラを超えて怒りになっていました。帰宅してからも一緒にいたくなくて、家を出て近所の喫茶店で深夜まで時間をつぶしました。
奥さんは…怒るでもなくただ悲しそうな顔をしていました。
どうしてわかってくれないんだろう。
たぶん、お互いにそう思っていたと思う。
後から考えれば、ピックアップ障害かどうかはやっぱりどっちでもいいことだと思います。妊娠できたんだから。ただしそれはあくまで「不妊治療的」にはの話。
でも奥さんにとってはずっと悩み続けていた自分のカラダの問題。自分に何が起きているせいでこんなに苦しまなくてはならないのか。「体外受精では妊娠できた」という新しい情報で、結局何が悪かったのかわかるのではないか。わかるんだったら絶対に知りたい。
こだわるのも無理はなかった。どっちでもいいことなんかじゃなかった。
やっぱり…怒ったボクが悪かったかな。ごめんね。
*「16.ピックアップ障害」もご覧ください
次回は「26.胎嚢確認」です
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