つらい、悲しい、大変なご経験だったと思います。この記事では、ボク自身が初めて授かった子どもを亡くしてからの1年間、死産を経験した夫としてのありかたについて考えてきたことを書いていきたいと思います。
産まれてくるはずだった子供を亡くす悲しみというのは、他に例えようもないほど深いものです。思い描いていた、楽しみにしていたおなかの子との生活はある日突然無くなってしまい、再びやってくることは決してありません。
それでもボクたち夫は、わが子のお葬式や火葬の手続きをし、傷ついた妻を支え、今までと同じように外に出て仕事をこなさなければなりません。
外に出れば今まで以上にベビーカーや妊婦さんの姿が目に付くようになります。
あるいは職場で、周りのおめでたや育児の話を聞かされたり、同僚の携帯の待ち受けが可愛い子どもの写真であるのに気づいてしまったりするかもしれません。そのたびに亡くなった子のことを思い出し、胸が締め付けられる思いになるでしょう。
どうかそんなつらいことがあった日は、家に帰って奥さまにそのことを話してあげてください。
「こんなことがあったよ」
「こんな話を聞いたよ」
「あの子を思い出してつらくなったよ」
きっと奥さまはあなたの話に共感し、自分と同じ思いでいることを喜んでくれると思います。
決して「俺は頑張ってるぞ」アピールのためではありません。お互いが孤独にならないようにするためです。離れていても、つらい時間を一緒に過ごしていることを確認しあうためです。
たくさん情報を集めてください。「グリーフケア」「天使ママパパ」「死産」「喪失」などで検索すれば、たくさんの専門家や経験者の発信する情報が出てきます。そして有益なものや心が休まるようなものが見つかったら、どうぞそれを奥さまにも教えてあげてください。
いろんな情報を集めて、ある程度時間が経てば、悲しみを癒すために何か行動を起こそうと思うようになると思います。たとえば気晴らしに出かけるとか、趣味に打ち込むとか、遺族会に参加するとか、カウンセリングを受けてみるとか。プラスになると思うことはやってみてください。奥さまにも提案してみてください。
ただしもし奥さまがその提案に乗り気でないようだったら、決してそれを無理強いしないでください。
たとえば自分の体験を人に語ることが癒しにつながるとよく言われますが、最新の心理学研究では語ることで逆効果になることがあると証明されています*。
心のケアには、それが必要な時期があるのだと思います。奥さまがあなたの提案を受け入れられないのは、まだ奥さまにとってはその時期ではないということなのだと思います。
このことを理解するのは死産を経験した夫のありかたとして、一番難しい点だとボクは思います。
あなたが仕事から疲れて帰って来ても、奥さまはまた亡くなった子を思い出して泣いている。
いつまで落ち込んでるんだろう。
なにか気晴らしでもすればいいのに。
友達とご飯でも行って来ればいいのに。
何か立ち直る努力をすればいいのに。
つい口に出してしまう。でも奥さまは受け入れずにまた泣いている。
イライラして、腹が立って、俺だってつらくても頑張ってるんだぞ、と言いたくなる。
同じ経験をしても、傷の深さが違うのだと思います。当然です。奥さまは毎日自分のカラダで、その子の存在を感じていたのですから。そしてその子がもういないことも感じ続けているのですから。
だからあなたと奥さまでは心のケアに必要な時間も違います。それを理解してあげてください。もう少し待ってあげてください。
産まれてくるはずだった子供が亡くなっても、その思い出や経験はいつまでも残り続けます。その子が今ここにいないということは、その子がおなかに宿る前に戻ることでは決してありません。
だから家族のつながりを再構築する必要があるのだと思います。このつらい時期を奥さまといたわりあって、信頼し合って、そして時間をかけてそれを定着させることが大事なのだと思います。
寛容であることはできても、寛容であり続けることはとても難しい。
多分、思っているより大変で時間がかかることです。ゆっくり、あせらず。そしてもちろんお互いが孤独にならないように、あなた自身の悲しみも日々、奥さまに伝えてあげてください。
実践することはとても難しいことですがボクはそれが、ボクたち死産を経験した夫のありかただと考えています。
*ガイ・ウィンチ「NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法」より。原著論文は書籍をご参考ください。
次回は天使のはなし「27.忌引き休暇」です。