子どもの時から
ピアノの高音が好きでした。
でもその冷たくて固い音の響きに
何か、もの悲しさを
感じることがありました。
大人になって、
やっとその理由が分かった。
短い弦を
ハンマーで叩いて生まれる音は
高い振動数で激しく空気を震わせ、
そしてみるみるエネルギーを失って、
他の音よりも早く減衰し、
消えていく。
美しく、儚い。
溶けていく透明な氷みたいに。
ハナレグミさんによる宇多田ヒカルさんのカバー。原曲ももちろんいいのですが、このカバーはアレンジが本当に秀逸です。やわらかいアコースティックギター、冷たくて固いピアノ、優しくて温かいホーン。シンプルなそれぞれのリフが重なり合って、とても美しく楽曲を彩ります。
「宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-」収録。
次回は天使のはなし「19.泣かない」です