流産を経験されて、お子さまを亡くされて、きっとあなたは泣き崩れる奥さまを必死になぐさめたと思う。
「キミが悪いんじゃないよ」
「仕方なかったんだよ」
「また次がんばろうよ」
それでも奥さまは泣き止まなくて、どうしていいか途方に暮れたと思う。時間が解決してくれるのを待つしかないと思ったかもしれない。
あるいは流産のことを他の誰かに話した時こんなことを言われたかもしれない。
「一番つらいのは奥さまだから」
「あなたがしっかり支えてあげないと」
もちろんそうだ。一番つらいのは奥さまだ。それはわかってる。
でも、亡くなったのはあなたの子供でもある。
その子はあと数か月もすれば産声をあげ
あと1年もすればあなたを見て微笑み
あと2年もすればヨチヨチとあなたのもとに歩いてきて
あと3年もすればあなたを「トト」を呼ぶようになるはずだった。
そしてかけがえのない家族として一緒に生きていくはずだった。
あなただってつらくて、
悲しくて当たり前だ。
しっかりなんかできなくて当たり前だ。
だからあなたも、奥さまと一緒にもっと悲しがっていいと思う。泣いてもいいと思う。奥さまだって泣いているあなたを悪くなんて思わない。つらい気持ち、悲しい気持ちを2人で共有できていることに、たぶん安心してくれる。
そして少しだけ涙がおさまったら、2人で亡くなったお子さんのことをたくさん話してください。
奥さまに聞いてみてください。
「この子は男の子だったのかな?女の子だったのかな?」
医者に聞かなくても、奥さまにはわかっていたかもしれない。
そしてその子に名前をつけてあげてください。ずっと愛せるような素敵な名前。
その子が奥さまのお腹から出てきた日は、その子の誕生日でもある。毎年祝ってやろう。小さなケーキと、小さなおもちゃを買って。その日はずっと、その子のことを思い出す日にしよう。大きくなったその子を一緒に想像してみよう。
エコー写真はほんの数枚しかないかもしれない。きれいにプリントして、いつまでも残しておいてやろう。できればデジタルデータにして、信頼できるクラウドに保存して、色褪せることも無くすこともなく、死ぬまで大切にアーカイブしておこう。
今は悲しくても、つらくても、時間がたてばその痛みはやわらいでいく。だから忘れようとする必要なんかない。せっかく産まれようとしてくれた命のこと、忘れてやったらかわいそうだ。
姿が見えなくても、
声が聞こえなくても、
抱きしめることができなくても、
その子はいつまでもあなたたちの子供でいてくれる。
だからずっと
一緒に生きていけばいいんだと
ボクは思います。
次回は不妊治療記「29.癒す旅」です