なんとか不妊クリニックを卒業することができたボクたちでしたが、まだまだ安心はできません。なんせボクたちは不妊で不育で高齢妊娠。よくない要素はいやほど揃っている。転院先の病院で受診するのはバッチリ「ハイリスク妊娠外来」だ。まだまだ安心しちゃだめだ。まだまだ。まだまだ。
とはいえ…やっぱりうれしい。もうこれからはうまくいく確率のほうがずっと高い。
両親や、上司や、親しい友達にも報告しました。みんなこころから祝福してくれた。「おめでとう」っていってくれた。やっと、ようやく、人並みの幸せがやってくると思えた。
そしてボクは一つの日課を始めました。それは「1日1秒だけ動画を撮ること」。
とある映画で見たスマホアプリ。スマホ動画を勝手に1秒ずつつなげて編集していってくれるというもの。ボクはこのマタニティライフを毎日記録して1本の動画にしていこうと考えました。
移植した日を妊娠2週目と考えるから出産まではあと38週。266日。
1日1秒ずつだと合計266秒。約4分半。
4分半にまとめたボクたちのマタニティライフ。
その中に、10か月間ボクたちがおなかの子のためにしたことを詰め込んでいこう。
こんな本読んだなとか。
こんなもの買いに行ったなとか。
こんな人に会ったなとか。
こんな場所に行ったなとか。
そしてもちろん、最後は産まれてきた子の笑顔で動画をしめくくろう。
ステキなテーマソングをつけてやろう。
それはそれは大切な、かけがえのない宝物になるはずだ。
子供が大きくなってその動画を見た時、きっと自分がどれだけ愛されて産まれてきたかわかってくれるはずだ。
しかしボクは…
結局その動画を完成させることはできませんでした。
ここから先は、それにいたるまでのボクたち夫婦のはなしになります。
「02.マタニティダイアリー」へつづく