体外受精後の不妊クリニックでは毎週のように受診があったため、産科に転院してからの月1~2回の受診ペースは拍子抜けするほどのんびりとしたものに感じられました。あっけらかんとした待合の雰囲気にはなかなか慣れなかったけど、それでも順調にマタニティライフは過ぎていきました。
そんなある受診の日、不妊クリニックでもらっていた自己注射用ヘパリンがそろそろ無くなりそうだったので初めて産科で処方してもらいました。
ヘパリン自己注射に必要なもの。お薬のほかに注射針、アルコール綿、絆創膏。お薬は院外処方だけど、そのほかのものは病院でもらって帰らないといけない。診察室の外で待っていると、奥の方で看護師さんたちのひそひそ声が。
え?ヘパリン?
何々?なに渡すの?
注射針?何ゲージ?
絆創膏もいるの?このサイズでいいの?
・・・。
明らかによくわかってない。
なんとか一式受け取って処方箋をもって、近くの調剤薬局へ。
薬剤師さんが3人もいる大きな薬局。処方箋を渡すと薬剤師さん、
はいはい、え?ヘパリン?
えーっと…ちょっと待っててくださいね。
慌てて奥に入っていって何やらベテランそうな人と話してる。戻ってきて
えーっと、ちなみに何に使うのに処方されました?だって。
あの、妻の妊娠中の血栓の予防です、と説明すると、
あー、うんうん、なるほどね。
えっと、申し訳ないんですけど当店では取り扱いがなくて、
お取り寄せになりますがよろしいですか?
調剤薬局、しかも結構大きな薬局で取り扱ってない薬があるなんて知らなかった!お取り寄せグルメならぬお取り寄せグスリか。わはは。
ていうかお取り寄せ?手持ちのヘパリンはあと4日分しかないぞ?
どうする?どうする?
ヘパリンがない!!
いやいや、聞けば3日で届くとのこと。なんとか間に合いそうだ。よかった~。でも次からは余裕をもって来るようにしよう(◎_◎;)。
そしてボクはこの日の看護師さん、薬剤師さんの慌てっぷりをみて、あらためてボクたちが特殊な状況に置かれていることを痛感しました。
データによれば*不育症(2回以上の流産)の割合は妊娠した女性の6%。
そのうちヘパリン自己注射の適応となる「プロテインC欠乏症」「プロテインS欠乏症」「抗リン脂質抗体症候群」の割合は合計16.6%。
つまりヘパリン適応となるのは妊娠した女性の約1%。そしてもちろんそのすべてが治療を受けるわけではない。むしろ治療を受ける人のほうが少ないかもしれない。
要するに、在宅ヘパリン自己注射やってる人ってすっごく珍しい、ってこと。
あーあ、なんでまたボクたちが、なんて言っても始まらない。一日一日がんばっていくしかない。もうすぐだ。もうすぐボクたちの子どもに会えるんだから。
*Fuiku-Labo「ヘパリンカルシウム在宅自己注射のお知らせ」
次回は「04.出生前診断」
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