13.死産

 

案内された病室。そこでしばらく待っていると手術着姿の主治医の先生が入ってきました。その顔に笑顔はありませんでした。

 

「陣痛中におなかのお子さんの心拍が急激に低下したため、緊急で帝王切開を行いましたが、取り出した時には…お子さんの心臓はすでに止まっていました。すぐに蘇生を試みましたが、心拍が戻ることはありませんでした。残念ながら…死産という結果になりました

 

あぁ。

あぁ。

なんてことだ。

どうして。

どうして…。

 

泣き叫ぶボクの声は、もしかしたら廊下や他の病室にまで聞こえてしまっていたかもしれない。

 

先生は説明を続けました。

 

「こうなった原因は今のところ全く不明です。妊娠中の経過にも、陣痛中も大きな異常は見られませんでしたし、いわゆるへその緒が巻き付いたような状態でもありませんでした。他に考えられるのは…」

 

ボクは、先生があまりにココの話ばかりするので少しイライラしました。

 

「妻はどうなりましたか!」

 

「奥さまはご無事です。緊急での処置だったため、子宮が一部裂けてしまい修復に少し時間がかかりましたが命に別状はありません。もうすぐこちらにお戻りになると思います」

 

あぁ…よかった…。

奥さんは無事だった。

でも、ココは…。

 

 

しばらくして奥さんを乗せたベッドが病室に入ってきました。奥さんは麻酔から覚めたばかりなのか、うつろな目で天井を見上げていました。酸素マスクや導尿バッグやたくさんの点滴が、あまりに痛々しくてかわいそうだった。

 

そばにいって、奥さんの顔をのぞきこんだ時、奥さんは泣きはらしたボクの頬にそっと手をあてて言いました。

 

「泣かないで」

 

奥さんに…伝えなければいけない。

 

「あのね…。ココ、ダメだったんだって…。死んじゃったんだって…」

 

「…」

 

「意味、わかる?」

 

すると奥さんはすこし困ったような顔をして言いました。

 

「わからない」

 

この時のことを、ボクは一生忘れることはないだろうと思いました。

 

 



 

14.ココ」へつづく


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