3回目の人工授精が不成功に終わった後、言い出したのはボクの方でした。
「次ダメだったら…ちょっと休もうか。」
通っているクリニックの方針としては人工授精は6回トライしてダメなら次のステップへ。しかし人工授精で妊娠できる人の90%は4回までで成功するそうです*。もちろん確率は低くても5回、6回目で成功する人はいる。なかには10回目で成功する人だっているらしい。それにかけるという選択もありました。でも…ダメもとと開き直って治療を続けるには、ボクたちはあまりにも疲れすぎていました。
「うん…ちょっと休みたい」
最初に決めたエンドポイント。体外受精はしない、人工授精まで。それでだめだったらこどもは…あきらめる**。
でもこの時のボクたちにはそれをすぐ決断することはできませんでした。自然とボクたちは「やめる」ではなく「休む」という言葉を使っていました。
4回目の人工授精。とりあえずこれで最後だ。不妊治療の神さま、最後くらいいいとこ見せてよ。
しかし結果は…
惨敗。
陰性判定後の診察。先生にもその話をしました。もちろんボクとしても当初の先生の意向と違うことを話すのはとても勇気がいることでした。
「う~ん、今回も…残念でしたね。次回はだいたい○日ごろに…」
「あの、先生。実は…妻とも話して、少し治療を休もうかと思っています」
「…」
「人工授精の場合はほとんどが4回目までで成功すると聞きました。このまま繰り返しても成功する可能性は低いようですし、ちょっと精神的にも…負担が大きくなってきました」
「…そうですか」
「最初は人工授精までと思っていたのですが…。とりあえずしばらく治療を休ませてもらって、ゆっくり今後のことを考えさせてほしいのです」
「うん、わかりました。当院では人工授精も6回までトライすることが多いですが、おっしゃるように5回目6回目で成功する確率はあまり高くありません。4回を一区切りとするのもいいと思います」
気分を害している様子はない。しっかり受け入れてくれた。
「しばらくお休みになって、今後どうするかはご夫婦でしっかりご相談になってください。ただ私個人の考えとしては…技術が進歩した現代で、体外受精を試す前にお子さまをあきらめる必要は全くないと思います。体外受精でご妊娠される方はほんとうにたくさんいらっしゃいます。どうぞご検討なさってください」
普段とても穏やかで、どちらかといえば「あんまり期待しないでね」感すらある先生の口調が、そのときはとても力強く聞こえました。
体外受精を試す前に子供をあきらめることはない
この言葉は、その後のボクたちの決断に大きな影響をあたえました。
とはいえ、とりあえず
ボクたちはすこし不妊治療を休むことにしました。
*以下の不妊治療専門医院サイトを参考にしました。
愛知県 浅田レディース名古屋駅前クリニックさま
東京都 東京歯科大学市川総合病院 リプロダクションセンターさま
北海道 みずうち産科婦人科さま
新潟県 大島クリニックさま
三重県 西山産婦人科不妊治療センターさま
神奈川県 メディカルパーク湘南さま
大阪府 春木レディースクリニックさま
奈良県 アスカレディースクリニックさま
**「10.不妊治療の決断」参照
「18.体外受精」へつづく