半年ぶりに訪れた不妊クリニックはそれまでと何ら変わることもなく、相変わらずたくさんの患者さんとテキパキしたスタッフさん、そして寝ぐせの先生。
先生には
「よく戻ってきたね!また一緒に頑張ろう!!」
感はまるでなく、いつも通り淡々と
「うん、じゃあ次のステップに移っていきましょうか」。
ボクたちみたいに体外受精へのステップアップ、すぐには決断できないって実は結構よくあることなのかも(;・∀・)。
ボクたちの通うクリニックでは体外受精、顕微授精の前にかならずオリエンテーションを受けることになっていました。50ページ近くあるしっかりしたマニュアル本をいただき(この本、最後ボロボロになるまで読んだなぁ)、看護師さんとボクたち夫婦と3人でみっちり1時間半。
体外受精なんたるかや、実際の治療のスケジュール、費用面や成功率のことなど。質問もしっかり受けてもらえて。結構やることいっぱいだなぁ、やっぱりお金もかかるなぁ、でもこの時ボクたちの一番の関心ごとは通院日のこと。
仕事を休まなければいけない日がどのくらいあるのか?
そしてその日は何日前に決定するのか?
結論として
仕事を休まなければいけないのは採卵日と移植日。つまり最大で月に2日。
その日が最終決定するのは一番遅いと2日前。
これは奥さんはもちろん、ボクにとっても大問題でした。
人工授精までの治療はすべて夜の診療時間でできること。つまり残業さえ回避できればボクの仕事には影響なく行えたわけですが、さすがに2日前、というか2日前の夜に決定するので結局職場には1日前に「すんません、明日仕事休ませてください」といわなければならない。
いよいよボクも職場にカミングアウトせざるを得ない状況になりました。
次の日ボクは上司に、この3年間不妊治療を続けてきたこと、しかし結果が出ずに体外受精を行うことになったこと、それにあたって急に仕事を休む日が月に最大2日発生することを話しました。
上司は40半ばの3児の父親。熱血漢で人情派。ボクの話に同情し「仕事のことなんか何も気にするな。休みたいときに休めばいい」とあっさりOKしてくれました。とてもありがたいことでした。
これはボクの想像ですが、同じ不妊治療でも“体外受精やってます”となると世間的な印象がまるで変わってくるような気がします。いい悪いではなく「こいつ本気だな」という風に。おそらく多くの人が体外受精でイメージするものは、TVでよく見る卵子の周りを精子がワラワラする映像、あるいはマイクロピペットで卵子をぷちっとするあの映像(あれは顕微授精だけど)。
ものすごく非日常的なこと。そこまでするのか、と思うようなこと。
できれば周りには知られたくない。こっそり不妊治療したい。でも仕事しながら体外受精をするにはどうしても周りに迷惑はかかってしまう。それならば「そこまでして子供がほしいんです。本気なんです」と伝わっているほうが周りも納得しやすいのではないか、とも思うのです。少なくともボクら男性同士の場合は間違いなくそうだと思う。
女性同士だと多分もっと複雑でしょうが…奥さんの職場もなんとか理解はしてくれたようです。不妊治療を休んだ期間、しっかり仕事に打ち込んでいたのも良かったのかもしれません。もちろん女性だらけの職場、ホンネは…わからないけど*。
ともあれボクたちの体外受精にむけた準備がスタートしました。あわただしい一か月のはじまりでした。
*「13.カミングアウト」参照
次回は「20.排卵誘発剤の自己注射」です