19.泣かない

 

ココの死産から3日目の朝。

ボクは担当の助産師さんに別室に呼び出されました。

 

「お子さまが亡くなられて今日で3日になります。おそらくとてもつらい思いをされていると思うのですが、この3日間お世話させていただいていて、その…奥さまが泣いていらっしゃるところを一度も見たことがないのです。どんなことにも淡々と受け答えされます。奥さまは普段からそのような性格の方なのでしょうか?」

 

そうなのでした。

奥さんはココが亡くなってから、

ただの一度も泣いていませんでした。

 

ボクは助産師さんに、奥さんは普段は感情表現が豊かで、つらいことがあると泣くこともあることを説明しました。それを聞いた助産師さんには、場合によっては何か医療的なケアが必要になるかもしれないと言われました。

 

 

ボクは奥さんが、壊れてしまったのかもしれないと思っていました。

 

 

その日も奥さんは終始おだやかに過ごしていました。

ココを病室に連れてきてもらったときは、柔らかく優しく、ココを抱っこして微笑んでいました。

 

 

その日の夜中、病室で眠っていたボクはふと目が覚めました。

 

聞こえてきたのは、となりのベッドで奥さんが小さくすすり泣く声でした。

 

あぁ、よかったな。

 

ボクは奥さんのそばにいって、肩を震わせて泣いている奥さんをゆっくり撫で続けました。

 

 

きっとボクたちにはこれからこんな夜が何度も何度も訪れる。

ボクが泣いてしまう夜だってきっとあるだろう。

 

でもそれは決して悪いことじゃない。たぶんそれはボクたちが自分を取り戻すために必要なことで、今日がその最初の夜なんだ。

 

 

泣き疲れてねむった奥さんを見て、ボクも少し安心してまたねむりました。

 

 



 

20.帝王切開後の体外受精」へつづく