4日目。
ボクは朝の診察に来てくれた主治医の先生を呼び止め、少し二人で話をしました。
「もしまたボクたちが子供が欲しいと思ったら、いつから不妊治療を再開することができるでしょうか?」
先生は少し考えて答えてくれました。
「一般的には死産の後でも、すぐに不妊治療を再開することができます。ただし奥さまの場合は帝王切開していますので、残念ながらすぐにというわけにはいきません。子宮の傷が十分にくっついていないと胎児が大きくなったときに子宮破裂をおこす恐れがあるためです。そのため帝王切開後は次の妊娠まで1年以上開けるというのが定説になっています。ただしこの1年というのはあくまで経験則から来ている数字で根拠はとくにありません。半年や10か月なら絶対ダメと言い切れるわけではありません」
「…」
「ちなみに、凍結胚はまだ残っていますか?」
「はい、3つ残ってます」
「一つの方法としては移植は1年後としても、それまでに採卵だけもう一度しておくということはできると思います。次の移植までに弾数を増やしておくということですね。もちろん3つ残っていればまだ十分、次の妊娠の可能性はありますが、1年間何もできないというのもおつらいかと思いますし…」
なるほど、帝王切開でも卵巣は触っていない。だから採卵はできるのか。そういうものなのか。
とはいえ、もちろんボクは早く不妊治療を再開したいと思っていたわけではありませんでした。この時のボクはまだ頭が真っ白な状態で、ひどく疲れていて、むしろあのつらくて苦しい不妊治療をまた始めるなんてとても無理だと思っていました。もう子供はあきらめて、ココの思い出と一緒に二人で生きていこうとさえ考えていました。
でも選択肢を知りたかった。
ボクたちがこれから自分を取り戻して、ココがいないことを受け入れていくために、今からできるだけの選択肢を集めていくことが必要だと、ボクは思っていました。
「21.沐浴とカンガルーケア」につづく