21.はじめての採卵。そして父になる?

 

はじめての採卵日は幸運にも土曜日。ボクも奥さんも職場に迷惑かけずにすんだのは大きな安心材料でした。

 

採卵の予約時間は朝8時30分。あれ?クリニックの診療時間って朝10時からのはずなのに…。そっか、ほかの患者さんの診察とかと重ならないように診療時間外にするんだな。先生もスタッフさんもホント大変だな、ありがたし。と勝手に感謝しつつ、遅れないように早めに出発。

 

・・・早く着きすぎた💦。診療時間前なのでクリニック、開いてすらない。やむなく車中で待機。

 

「いよいよだね、やっぱり緊張する?」

「緊張する。結構おなか張ってる」

「2cmの卵胞が10個もあるんだもんね。おなかの中卵胞でいっぱいだね」

「うん、たくさん採れてほしいな」

「大丈夫。先生も順調って言ってたし」

 

そうこうしているうちにスタッフさんが駐車場まで呼びに来てくれて受付。周りには同じように早くから待ってるご夫婦が2組。みんな同じように今日が採卵なんだな。

 

ここで受付のスタッフさんから驚きの注意点が。

「あの~ここ村さん実はですね、今日もう一組、同じここ村さんというご夫婦の採卵があるんです。私たちも十分に注意して、いつもよりしつこくお名前を確認しますので、かならずフルネームでお答えくださいね」

 

見渡すと、もう一組のここ村さんらしきご夫婦が。

 

一抹の不安。。。

たぶんお互いに。

 

ちょうどそのころ、世間では福山雅治さん主演の「そして父になる 」という病院での子供の取り違えをテーマにした映画が話題になっていました。

 

やめてよ、取り違えとか。。。

 

いやいや、ミスというものはたいがい、起こらないと思って油断しているときに起こるもの。ミスしそうだなと思っていつも以上に慎重になってるときには起こらないもんさ、多分…。自分と、奥さんに言い聞かせる。ちなみに映画の取り違えはミスではなく、悪徳看護師の故意によるものだそう。ごめんなさい、観てないのでよく知りません。

 

 

そして採卵準備のための病室へ案内されました。医療用ベッドのある4畳ほどのきれいな個室。奥さんは検査用のガウンに着替え、採卵室へ入っていきました。採卵室の様子は、当たり前ですが病室からは全くうかがい知れず、とても静かな病室でひとり不安になっていたように記憶しています。と、思っていたらものの15分ほどで看護師さん、

 

「ここ村さん、奥さまの採卵終わりましたので今から採精してきてください」

 

え、はや!

でもということは無事に終わったってことだろうな。よかった。とりあえず一安心。

 

採精をすませて病室にもどると、奥さんはすでに帰って来ていてベッドで休んでいました。麻酔のせいか少しぼーっとはしていましたが顔色は悪くなく、気分もよさそう。

 

「どう?痛かった?」

「ううん、すぐに麻酔が効いたから、なんかぼーっとしてる間に終わった」

「がんばったね、ありがとね」

「うん、うまくいってよかった」

 

奥さんはそのまましばらく眠って、スタッフさんの持ってきてくれたお菓子を食べてボクたちは病室を出ました。

 

この廊下をはさんだ培養室では今まさにボクたちの精子と卵子が出会って受精しようとしているのだ。

もしかしたらそれはボクたちにとっては初めての出会いかもしれないのだ。

 

それを想像してボクはなんだかゾワゾワしました。

 

あれ?そういえばもう一組のここ村さんはどうだったんだろう?うまくいってたらいいな。

 

 

 

22.受精卵」へつづく