22.精神科

 

主治医の先生の勧めもあり、奥さんは同じ病院の精神科を受診することになりました。

 

今までボクも奥さんも精神科を受診したことはない。勝手にものものしい場所を想像してしまうけど、中は普通の診察室で、内容も診察というよりは話を聞いてもらうカウンセリングのような感じでした。

 

奥さんと一緒に診察室に入ると、精神科の先生はボクたちよりずっと若そうな女医さんでした。奥さんは先生に聞きだされるままに、生い立ちの話や、つらかった不妊治療の話や、ココの話をたくさんしました。途中、泣きながら話す奥さんの話に先生まで泣きだしてしまって、ボクは医者が患者の前で泣くなんてことがあるんだなと驚いたけど、ボクたちの感情の震えを感じてもらえたことはうれしかった。

 

そして話はココの病理解剖のことになりました。

解剖に同意されたことはとてもお辛かったでしょう?と先生に聞かれたとき、奥さんはこう答えました。

 

「娘の上の子は、6週の流産でなくなりました*。あの子を流産しそうになった時、私は身体から出てくるあの子を必死で受け止めてやろうとしたけど受け止めてやれなくて、結局あの子がなぜ亡くなったのか、調べてもらうことすらできなかった。それが本当に悔しくて、申し訳なくて…。だから今度こそはちゃんと調べてやろう、検査を受けさせてやろうと思ったんです」

 

2年前、流産で亡くなった上の子、ダイチ。もちろんその時も、ボクはとてもつらくて悲しかった。ボクだって決してそれを忘れることはない。それでも奥さんがココを妊娠して、ココがどんどん大きくなっていくにつれて、少しずつ痛みは和らいでいた。

 

でも奥さんにはやっぱり変わらずつらくて、痛くて、悔しいことのままだったんだな。それはココがお腹の中で大きくなっていくときにも、ココが亡くなったときでさえも。

 

お互いのつらさを分け合って、共感しあって、わかりあって今までやってきたつもりだったけど、それでもなお奥さんの心の傷を、ボクは理解できてなかった。ボクが思っているより、もっともっと深いものだった。

 

だとすれば…ココのことで奥さんがうけた傷はいったいどれほど大きいのだろう。それが和らぐのに、どれほど時間がかかることなのだろう。

 

これからの奥さんが、ボクたちがどうなっていくのかその時は見当もつかず、ただただ不安でした。

 

*不妊治療記「27.流産

 

 



 

23.ココ、帰る」へつづく