23.ココ、帰る

 

5日目。ついに明日はココのお葬式だ。

 

奥さんはまだ貧血はあったけども、ゆっくり一人で歩けるようにはなっていたし、点滴ももう必要なかった。

ボクたちは外泊許可をもらい、最後の日をココと一緒に自宅で過ごすことになりました。

 

痛み止めの薬や、張った乳房を冷やすためのアイスノンをたくさんもらい、分厚いおくるみで包んだココを抱いてボクたちは自宅へ帰りました。

 

ココを抱いた奥さんを助手席に乗せて走る帰り道。通り慣れたこの道を、いつもよりずっとずっと慎重に運転して。

 

はじめてココを迎え入れた我が家は、ボクが一人で帰った時よりはだいぶ明るくみえた。家じゅうが、ココが帰ってきたことを喜んでいるようにみえました。

 

1週間ぶりの我が家に安心したのか、奥さんはすぐ横になって眠ってしまいました。本当におつかれさま。そしてそのまま夜までぐっすりと眠り続けました。

 

ボクはココを抱っこしながら、家じゅうのいろんなところを見せてやりました。

 

ほら、ここが台所だよ。ココのご飯を作るところだよ。

ほら、ここがお風呂だよ。このあいだもお風呂に入ったね。気持ちよかったね。

ほら、ココのお部屋だよ。これがココのベッド。ココのおもちゃ。ココのお洋服。全部、ココのものだよ。

 

そのあと、ココと一緒にDVDをみました。ボクが大好きなBBCの大自然ドキュメンタリー。美しい世界中の自然や動物や海の中の風景。ボクはココに、きれいなものだけをみせてやりたいと思っていました。

 

そしてボクはココに絵本を読み聞かせました。「星の王子さま」を読みました。

「いちばん大切なもの」をテーマにしたこの物語は、この時ココに読み聞かせるのに一番ふさわしい物語に思えました。

 絵本 星の王子さま (児童書)

 

夜になって奥さんも目を覚まし、3人で晩御飯を食べました。そしてボクはココと一緒にお風呂に入りました。

 

産まれたばかりの子とお風呂に入るなんて普通はできない。これはボクだけの特権だ。

裸ん坊になったココを大事に抱えて、ボクは湯船につかりました。この前、奥さんがしていたみたいにカンガルーケアの体勢になって、肌をぴったりくっつけて。毛むくじゃらの背中をずっと撫でていました。

 

すると…

あれ?なんか臭いぞ??

 

なんと!驚いたことに、ココがうんちをしたのです!

 

きっとお腹に残っていたうんちがお風呂で温まって出てきたのでしょう。急いで奥さんを呼びました。

 

「たいへんたいへん!ココがお風呂でうんちした!早くガーゼ持ってきて!」

 

奥さんも驚いた顔でガーゼを持ってきてくれました。

ボクはココのお尻を拭いてやって(女の子だからちゃんと前から後ろに)、湯船に浮かんだうんちを片付けました。

 

だれだ赤ちゃんのうんちは臭くないっていったのは。十分臭いじゃないか(笑)。

 

ボクたちの日常になるはずだった、そんなあわただしいやり取り。

ほんの短い時間だったけど、ボクはとてもしあわせだった。

 

お風呂から上がって真新しいオムツを着けたココの身体を、奥さんは丁寧にスケッチして、手足の長さや頭の大きさを測ってやっていました。奥さんなりの愛情表現。ココのことをすみずみまで知って、忘れないようにしたかったのかな。奥さんがスケッチしたココは、とてもとてもかわいかった。

 

そしてまたココに服を着せ、暖かいおくるみに包んでベランダに出ました。澄み切った真冬の星空。

よかった。もう一つ、ココにキレイなものを見せてやれた。

でもやっぱりボクは、涙が止まりませんでした。

 

あぁ、眠りたくないな。ココといられるのはもう今晩だけなのに。

それでも正直ボクも疲れ果てていたし、明日はココを見送る大切な日だ。

 

ボクたちは3人で川の字になって眠りにつきました。

 

もし夜中にココが大声で泣きだしたらどうしよう?

奥さんのおっぱいはもう出ないから、粉ミルクを探さないと。

あれ?オムツの替えはどこに置いてたかな?

いや、それよりまず病院に電話か。

 

そんなあまりに馬鹿馬鹿しいことを、なぜかその時ボクは、本気で考えていました。

 

よもやま話「冬の夜空はなぜきれいに見えるのか?」もどうぞ。

 

 



 

次回は「24.最後の朝

 

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