約1か月後、ついに胚盤胞移植の日を迎えました。午後1番の予約なので、2人とも仕事を休んでスタンバイ。採卵直後はOHSS気味とのことで移植を1周期見送ったため、タマゴたちはすべて凍結保存してもらっていました。凍っているタマゴが溶けてまた動き出すというのはなかなかSFチックだけれども、科学の進歩はすばらしい。
処置室に入った奥さんは20分くらいで出てきました。けっこう早いのね。奥さんによれば移植処置よりそのあとの安静の時間のほうが長かったくらいだそう。
そして診察室へ。先生から渡されたレポート用紙には、移植したタマゴの写真が載っていました。
まんまる…ではない、ポコポコした感じのまるいタマゴからミジンコの足のようなものがぴょろりとでた写真。
これが、ボクたちのタマゴか。
「うん、移植問題なく終わりました。(レポート見ながら)これが移植した受精卵ですね。今回透明帯はすでに破れていたのでAHA(アシステッドハッチング)は必要ありませんでした。親孝行なお子さんですね(笑)」
ちなみにこれはAHAにかかる技術料(2万円)がかからなくてすんだからという意味。先生お気に入りの不妊治療ジョーク(ΦωΦ)。
「さてそれでは○日に妊娠判定にいらしてください。しばらくは激しい運動は避けてくださいね。別に安静にしておく必要はありませんから」
はりきって仕事休んだのはいいが、昼過ぎには終わってしまった。とりあえず近くのレストランでもりもりパスタを食べて帰宅。安静にしておく必要はないとは言われたけど、やっぱりおなかのタマゴが気になる。念のため、その日は二人してゴロゴロ過ごしました。まぁ別にボクまでゴロゴロする必要はないけども(笑)
意識しないように。
期待しないように。
確かにボクたちの妊娠率は88%*。だけど今回だけ見ればたかだか30%だ。うまくいかなくて当たり前。平常心、平常心。
はやる気持ちを抑えながらついに迎えた判定日。
「うん!妊娠反応出ました」
え!?
いつになく力強い先生の視線と口調。ボクたちは喜ぶより先にまず激しく驚きました。奥さんは驚きすぎて着けていたピアスを勢いよく落としてしまいました。
え?妊娠したの?
こんなアッサリ?
30%なのに?
そしてその驚きは徐々によろこびにかわっていきました。
おいおい、信じられない
奥さんのおなかには今、
ボクたちの子供がいるのか。
それはとてもとても温かなよろこびでした。人が見ていなければ抱きあって小躍りのひとつも踊ってみたくなるような、そんな気分でした。
*「23.妊娠率88%!」参照
「25.ここトト、怒る」へつづく