真冬の曇り空の下。
お寺に着くと家族たちはもうみんな揃っていて、ココの到着を待ってくれていました。
お棺を開けて、みんなにココの顔をみてもらいました。
「こんにちは、ココちゃん」
「かわいいね~」
「ここトト似かな」
「あ、でもこの辺はここママに似てない?」
みんな口々にココに話しかけてくれました。ココが自分たちの大事な家族の一員であることを確かめてくれているようでした。
みんなが持ってきてくれたお花をお棺にいれて、ココはきれいなお花でいっぱいになりました。
お経をあげてもらったあと、みんなでココを火葬場に連れて行きました。
お棺が炉に入っていく直前に、ボクたちはもう一度だけココの顔を見させてほしいとお願いしました。
ココは、はじめて会ったあの時と何も変わらず、穏やかな顔でねむっていました。
どうしてこの子が。
こんなにかわいらしいのに。
こんなに大切なのに。
どうしてこの子にもう
会えなくなってしまうんだろう。
ココ、行かないで。
おねがいだから。
行かないでほしい。
泣きじゃくりながら、ボクは静かに炉に入っていくココを見送りました。
奥さんは、じっと気持ちを押し殺して立っていました。
予約してあったフランス料理屋さん。雰囲気も良くて、料理もおいしかった。みんな和やかにココの話や、お互いの近況を報告しあって楽しく過ごせた。もちろん、お誕生日席にはココの写真を置いて。注文しておいた小さなホールケーキには
ココ、ありがとう
と書いてもらいました。
火葬場に戻ると、
ココはまっしろな、きれいなお骨になっていました。
ちいさなココが、もっとちいさなお骨になっていました。
大声で泣き出した奥さんの肩を抱いて、ボクも涙が止まらなかった。みんなも泣きながら順番にお骨を拾っていきました。
「全部、全部連れて帰りたい」
その奥さんの言葉に係の人も応えてくれて、ていねいにていねいに、最後のひと粒まで残りのお骨を集めてくれました。今日初めて会った人なのに。ほんとうにありがたかった。うれしかった。
こうしてココのお葬式は終わりました。
さよなら、ココ。
ボクたちは真っ白になったココを大事に抱えて、また病院へ戻りました。
帰り際、冷たい雨が降り出しました。
泣き出しそうだった空が、最後に本当に泣き出すなんて。
出来すぎた映画の演出みたいだった。
そんなドラマチックじゃなくていいのに。
ボクたちが欲しかったのは
もっともっと
ささやかなものだったのに。
「26.退院」へつづく
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