5週目の診察。今日で胎嚢が確認できれば、大きな大きな前進だ。
内診室から出てきた奥さん、わずかに微笑んで。周りに聞こえないようにLINEで送られてきたメッセージは
「胎嚢見えたよ(^^)/」
診察室で先生は初めてエコー写真を渡してくれた。感熱紙に写ったエコー画像。真ん中にアーモンドみたいな黒い丸。長径10.2mmって書いてある。これが胎嚢か。
そしてその中に、ほんの数ピクセルの白い影。
ほんとにいるんだ、ボクたちの子供が。
あぁ、早く大きくなってほしい。
「うん、順調です。それではまた来週」
帰り道。
「ねぇ、ここトト。あたしこの子、絶対男の子だと思う」
「なんでそんなのわかるんだよ(笑)」
「ううん、わかるの。そんな気がするの。ねぇ、あたし男の子だったらつけたい名前があるの。“ダイチ”っていうの。いいでしょ?画数もいいんだよ」
ダイチ。
うん、悪くないな。いい名前だな。
ボクと奥さんに似た元気な男の子。
ボクと、
奥さんと、
ダイチ。
汚れたおむつや、
散らかったおもちゃや、
家じゅうの落書き。
にこにこした3人の
騒がしくてあたたかい生活。
そんな日がもうすぐやってくるのだと、
その時のボクたちは
思っていました。
「27.流産」につづく