26.退院

 

ココのお葬式の翌日。午前中のいくつかの検査をパスして、奥さんに退院許可が出ました。

 

たくさん洗濯物、暇つぶしの雑誌、プラスチックのマグカップやらお箸やら。

そしてココの肌着、ココのおもちゃ、ココのへその緒、ココの手形、ココがかぶっていた黄色いニット帽。

一切合切を大きなカバンにつめて、ボクたちはお世話になった病室を後にしました。

 

何人ものスタッフさんが病院の出口まで見送りに来てくれました。他の部署に異動になったにもかかわらず駆けつけてくれた人もいました。

 

きっとスタッフさんたちは、本当に懸命にココをケアしてくれていたと思う。ココはベビールームの涼しい場所で、たくさんのアイスノンが体中に巻いてあって(そのためココの身体はいつもヒンヤリしていた)、顔にはしっかりと保湿クリームが塗ってあった。

そのおかげで死産からお葬式までの6日間、ココはその最後の日までずっとキレイなままでいてくれました。肌が荒れてきたり、匂いがしてきたりすることは全くありませんでした。ずっと清潔なままでした。

 

そしてあの人たちは

ココの手形や足形を取ってくれた。

それを可愛いシールのついたメッセージカードにしてくれた。

廊下の声の聞こえない部屋を用意してくれた。

ココをお風呂に入れさせてくれた。

ボクたちが知らないところでも、みんなで交代にココを抱っこしてくれていた。

そしてなによりボクたちの気持ちに寄り添って、一緒に涙を流してくれたりもしました。

 

それらはこれからずっとココの思い出と生きていくボクたちには、とても大切なことでした。スタッフさんたちには本当に感謝の気持ちしかありませんでした。

 

 

こうしてボクたちは自宅に帰りました。

 

ココのお骨をテーブルにおいて、周りをおもちゃやお花できれいに飾ってやって。

そこまでやってしまうと、ボクも奥さんもドッと疲れて布団に倒れ込みました。

 

 

荷ほどきしなきゃな。あぁでもめんどくさいな。

 

明日からはまた仕事だな。

仕事…こんな状態で、できんのかな?

でも、もう休む理由もないしな。

 

奥さんは…しばらく仕事には戻れないだろうな。家でゆっくりしてくれればいい。とはいっても一人でいるのもつらいだろうけど…。

 

ていうか明日から…なにしたらいいんだろう?

もうヘパリンを打つこともないし、1秒動画も撮らなくていい。

毎日毎日、ドキドキしながら奥さんからの電話を待つこともない。

 

だって

思い描いていたココとの生活は、もうなくなってしまった。

どんなにがんばっても、どんな幸運が舞い降りても、絶対に永遠に取り戻せない。

それはもう確定したことだ。決定事項。考える余地なし。

 

おわり。もう、おわり。

 

 

さて、じゃあボクたちはいったい

どうしたらいいんだろう、これから…?

 

 

 

次回は天使のはなし「27.忌引き休暇」です。

 

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