3月のはじめ、叔母からの小包が届きました。中には小さなかわいい雛人形が入っていました。
添えられていた手紙にはお悔やみの言葉と一緒に、こんなことを書いていてくれました。
「かわいい雛人形を見つけたからココちゃんに贈ります。差し出がましいことだったらごめんなさいね。でも、ココちゃんがいるようにしてあげられたらと思って」
とても、うれしかった。
ココと過ごす時間。
ココとつくる思い出。
ココのためのイベント。
それらはすべて、ボクたちがもう失ったものだと思っていた。心に大きな穴を空けていた。
でもそれは失ったものじゃなかった。もちろんココはもういない。それでも今からでも、ココとの思い出は作れる。
ココがいたら、こんなだったろうな。
ココがいたら、こうしてやってただろうな。
できる範囲でいい。ココがいるときと同じようにしてやろう。それを新しいココとの思い出として積み重ねていこう。今は悲しいココとの思い出を、楽しいものにどんどん書き換えていこう。
ボクたちは雛人形をココの前に置き、周りを桃の花で飾りました。ココのためのひな祭り。ココの初節句。
おめでとう。
きれいだね、かわいいね、ココ。
レストランや、映画館や、遊園地。楽しいところに奥さんの作ったぬいぐるみを連れて行って、たくさん写真を撮りました。
100日目には尾頭付きの鯛を買ってきて、お食い初めをしました。
月命日は、毎月小さなケーキを買ってお誕生日パーティーをしました。
それらはココがいるときと何も変わらない大切な、楽しい家族のイベントでした。
ココがいるようにする。ココとの新しい思い出をこれからもずっと作っていく。ココの思い出を楽しいものに書き換えていく。
そうして過ごすことで、ボクたちは少しずつ日常を取り戻していきました。
次回は「31.終診」
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