30.おひなさま

 

3月のはじめ、叔母からの小包が届きました。中には小さなかわいい雛人形が入っていました。

 

添えられていた手紙にはお悔やみの言葉と一緒に、こんなことを書いていてくれました。

 

「かわいい雛人形を見つけたからココちゃんに贈ります。差し出がましいことだったらごめんなさいね。でも、ココちゃんがいるようにしてあげられたらと思って」

 

とても、うれしかった。

 

ココと過ごす時間。

ココとつくる思い出。

ココのためのイベント。

 

それらはすべて、ボクたちがもう失ったものだと思っていた。心に大きな穴を空けていた。

 

でもそれは失ったものじゃなかった。もちろんココはもういない。それでも今からでも、ココとの思い出は作れる。

 

ココがいたら、こんなだったろうな。

ココがいたら、こうしてやってただろうな。

 

できる範囲でいい。ココがいるときと同じようにしてやろう。それを新しいココとの思い出として積み重ねていこう。今は悲しいココとの思い出を、楽しいものにどんどん書き換えていこう。

 

ボクたちは雛人形をココの前に置き、周りを桃の花で飾りました。ココのためのひな祭り。ココの初節句。

おめでとう。

きれいだね、かわいいね、ココ。

 

レストランや、映画館や、遊園地。楽しいところに奥さんの作ったぬいぐるみを連れて行って、たくさん写真を撮りました。

100日目には尾頭付きの鯛を買ってきて、お食い初めをしました。

月命日は、毎月小さなケーキを買ってお誕生日パーティーをしました。

それらはココがいるときと何も変わらない大切な、楽しい家族のイベントでした。

 

ココがいるようにする。ココとの新しい思い出をこれからもずっと作っていく。ココの思い出を楽しいものに書き換えていく。

そうして過ごすことで、ボクたちは少しずつ日常を取り戻していきました。

 

 

 

次回は「31.終診

 

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