妊娠中の夫婦にとってエコー写真というのは、姿の見えない我が子との大切なつながりの一つ。奥さんが健診でもらってきてくれたエコー写真を、いつもボクたちはすぐに写真店でデジタルプリントしてもらい、ちゃんとファイルして何度も何度も眺めていました。
でもこのエコー写真、わが子の写真だと思うからかわいく見えるけども、客観的に見ればなかなかにグロテスクなもの。要するに身体をどこかの断面で切って中を覗き込んでるようなものなので、お腹の中だとか、頭の中だとかの、まぁおおよそ愛らしいとはいいがたいものも見えてくる。眼なんかまぶたが無くて、真ん丸の眼球だけが写るので、かわいいはずのお顔もどこかの宇宙人みたい。
でもコイツは違いますよ。その名も4Dエコー。正しくは4-Dimensional Echo Imaging。日本語で言うと4次元超音波!なんだか必殺技みたいなかっちょいいネーミング。
これで見てもらうと、おなかの中の子がリアルにしかも動く立体像として写ります。顔や手足がちゃんと人間っぽく、それらしく見える。なんで4Dというのかというと、いわゆる立体像としての3Dにもう一つ「時間」という次元(Demention)が加わるから。3D+1D=4D。つまり「4D=動く立体像」。それならば動く平面像のことは3Dと呼ばなければいけないような気もするが、まぁそれはいい。
ただしこの4Dエコー、ボクたちの通う病院の妊婦健診ではやってくれない。お金を出せばそれだけやってくれる病院も近くにはあるんだけど、決して安い金額じゃない。
ん~見てみたいけどなぁ、4Dのベベ。
そんな感じで二の足を踏んでいたところ…当たったのです。無料で4Dやってくれる抽選に。
それはとある妊婦さん、ママさん向けの大きなイベントでした。ベビーカーやら粉ミルクやら学資保険やら、赤ちゃんが産まれたら必要になるいろんなもののメーカーが集まって展示会をしたり、説明会をしたり、はたまたプレママパパのための講演会があったりと盛沢山かつお金のかかってそうなイベント。その中の催しの一つとしてあった4Dエコーコーナーの事前抽選にボクたちは見事当選していたのでした。
当日、鼻息荒く会場へ。当たり前だけど会場に来ているのは大半が妊婦さんや、小さな子ども連れのご夫婦。こんな時でも、ココと同じ歳くらいの女の子を見てしまうとやっぱり気持ちがざわつく。なるべく周りを見ないようにして歩く。
たくさんのブース。いたるところでバラまかれるサンプル商品とアンケート。ひとたび個人情報を明かしてしまったら、たちまち「ベビー用品顧客リスト」に追加されて、子どもの年齢に合わせて最適化された商品勧誘が何年にも渡って送られてくるんだろう。別に悪いことじゃない。
そんなことより4Dエコー。指定された時間にブースで受付してしばらく待ってから部屋に案内される。カーテンでパーティションされた簡素なスペースにベッド、そしてGeneral Electronic社製の最新エコー装置!
検査員の人と、何か月ですか?6か月?あーちょうどいい頃ですね。一番きれいに見える頃ですよ、なんて話しながら奥さんはお腹を出してベッドへ。さっそくプローブが当てられる。はじめは普通の2Dエコー。はーい、それじゃ見ていきますね、と検査員さんスイッチをポチ。画面が切り替わる。映る3次元合成された赤ちゃんの顔。
おおおおお。これがべべか。
エコー装置というのは超音波を飛ばして跳ね返ってきたものを画像にするので、超音波が跳ね返らない髪の毛だとか眉毛だとかは映らない。ちなみに色情報もないので単色のっぺらぼうで、なんだか「犬神家の一族」の助清に似ているような気がするが…それでもかわいい。
動かないね~、今は寝てるかな~、なんていってたら、べべ起きだしたみたいで腕を上げ下げしたり、口をむちゃむちゃ動かしたりしてる。
・・・やっぱりかわいい。
お顔が一番よく映ってるところをプリントアウトしてもらって、10分ほどで4Dエコー終了。いやーよかった。満足度高し。検査中ずっと撮っていたスマホの動画を、2人で何度も見返しました。べべが産まれて、大きくなってこの動画を見たら、いったいどんな反応をするんだろうな。楽しみでしょうがない。
それと同時に…ココにもやってやればよかったなという気持ちは、やっぱり少し残りました。でも不思議とそれは、それほど悲しいとか寂しいとかの気持ちではなくて、「べべばっかりずるいよ!」とココがむくれているような、よくあるあたたかい家族のやり取りみたいでした。
次回はよもやま話「祝!1周年」です