麻酔

 

久しぶりの感覚だった。

 

ある日の同僚との会話。

 

産休中の〇〇さんとこ、産まれたらしいよ。なんか陣痛が長引いて結局、帝王切開になってヤバかったらしいけど、でも無事産まれたって。

 

ああ、そうなんだ。うん、でも無事でよかったね。とは言ってみるものの、呼吸は浅くなり、視線は明らかに相手を避けていて、どこも見ていない。頭の中に半透明のフィルターがかかったような、この感覚。

 

多分これは防衛反応だ。ボクの中の、一番悲しい記憶へのアクセスを遮断するために感覚をぼかしているんだ。一種の麻酔みたいなものだ。

 

それでも身体は正直だ。誰にもわからない程度に、ボクにしかわからない程度に、両脚は震えていた。

 

 

 

 


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