それでも車を買いました

 

いつものように車での通勤途中、ふとフロントガラスのステッカーを見て、新車1年点検の日が近いのに気づきました。

 

そうか、もう1年たつのか。この車はあの子が亡くなってしばらくしてから買った車でした。白いワンボックスの軽自動車。いわゆる子育て世代のママさんカー。

 

それまで乗っていたのはボクが独身時代に買った黒いコンパクトカーで、見た目もかっこよかったし、故障知らずでよく走るし、はじめて自分で買った車だったから愛着もとても強かったんだけど、さすがに中古で買って10年以上も乗っていたからボロボロで、そろそろ買い替えかなぁなんて考えていた。

そしてあの子が奥さんのお腹にやってきてくれて、ボクも軽いマタニティハイになって、やっぱり次に買うのなら子育てしやすい車がいいよね!なんて思って、いろいろ調べて今の車を見つけたんだった。

でも奥さんはこういう時とても慎重で、まだ何があるかわからないんだから、産まれてから買い替えるので十分だよ、なんて言っていて、ボクはしぶしぶ納得していたけど、実はコッソリ一人で試乗に行ったりしていた。ベビーカーを積みやすいスライドドアとか、おむつ替えしやすいようにフルフラットになる座席とか、やたらいろんなとこにある収納とか。いかにも子育て世代狙いました系のスペックに、ボクはとても満足していた。そして誇らしげに、車屋の店員さんに話していた。

 

「もうすぐ子どもが産まれるんです」

 

 

でも結局その車に買い替える必要はなくなってしまって、黒いコンパクトカーはあの子が乗った最初で最後のブーブーになった。

 

半年後、15年目の車検を通そうかどうか迷っているとき、奥さんと冷やかしで入った自動車展示場でまたその車を見つけて、やっぱりボクたちはその車に買い替えることにしました。

もちろんもうベビーカーを載せることも、おむつを替えることもないんだけど、それでもできるだけ、あの子がいるようにしてやりたかった。あの子がいたらそうしたであろうことを、しようと思った。

 

新しいワンボックスカーは子育てしなくても十分に機能的で、燃費もいいし、スーパーの買い物袋を載せるのも楽だし、車内も軽自動車と思えないくらい広い。外観ははっきり言って無個性で、MINIとかFIATとかのオシャレな車に憧れるボクとしては大いに不満なんだけど、まぁ1年乗ってそれも慣れた。

 

でもせっかくの広い後部座席には、結局まだ誰も乗っていない。あの子の弟妹のためのチャイルドシートが、いつかそこに置ければいいのだけど。

 

 

 

次回は「お知らせとお礼」です