籠のクーファン

 

籠のクーファンを抱えて産院から出てくる彼の姿を見たのは、ココがいなくなって1ヶ月ほど経ってからのことだった。

 

彼は同じ職場の同僚で、ボクより10歳も若いけれど話の合う、面白くていい奴だった。食べ歩きが趣味で、近くの美味しいお店をいつも教えてくれていた。

 

その日はきっと奥さんが出産を終えて退院し、産まれた赤ちゃんを連れて帰るところだったんだろう。クラシカルな籠のクーファンは、いつもお洒落な彼によく似合っていた。そしてお洒落なクーファンなどではなく、隠すように布に包まれた小さな棺で産院を出たココのことが、とても可哀想で、やるせなくて、ボクはひとり物陰に隠れて泣いた。

 

 

そんなことをまた思い出したのは、同じような場所で今度はベビーカーを押す彼に出会ったからだ。ベビーカーにはひと月前に産まれたのだという、小さな女の子。可愛いね、とは言ってみたものの、やっぱりどこかまだ、羨ましくもあった。

 

 

 

 

 


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