生後5日目、べべには5000~1万人に1人という先天性の病気が見つかり、搬送先の大学病院で緊急手術を受けます。
真夜中の手術待合室で、ボクは思いました。
あぁ、まだ終わりじゃないのか。
不妊や不育に悩む人に、妊娠・出産はゴールじゃないなんて意地悪なことをいう人がいる。
そんなわけない。
不妊に悩む人にとって、妊娠はゴールだ。
流産・死産におびえる人にとって、出産はゴールだ。
ただそのゴールを迎えたからと言って、あらゆる不安や悩みがなくなるわけじゃない。
新しい局面には、その局面なりの不安や悩みがある。
あいかわらずボクたちは、それと向き合ったり、おびえたりしながら日々をやり過ごし、その中で何とか喜びや幸せを見つけようとする。たぶん、ずっとそういうものなんだろう。
ありがたいことに手術は無事成功し、べべは大きな後遺症を残すこともなく退院することができた。でも命が繋がった子と、そうでなかった子の違いがどこにあったのか、ボクにはわからない。
不妊や不育、流産、死産。振り返ってみればこうした経験で得たものはたくさんあるけど、だからよかったなんて思ったことは一度もない。そうじゃないほうが、そりゃよかった。
ボクは自分より仕事や才能に恵まれ、それでいて苦も無く子どもを授かった人を何人も知っている。人生なんて不公平なものだから羨む気持ちは無いけど、客観的に見れば、やっぱりボクたちは人より不幸な目にあったのだと思う。でもそう考えることに、なんの意味があるんだろう?
いま、ボクには守るべき家族たちと、大切で愛おしい記憶がある。
客観的とかどうでもいい。
ボクは自分を、とても幸せな男だと思うようにしている。
『虹のこども』おわり。
以降はシリーズ「天使パパの呟き」にまとめています。