あの子が亡くなってから、奥さんはやたらと宝くじを買いたがるようになった。あんな悪いことが起こったんだから、その代わりに良いことだって起こってくれてもいいじゃないの!という理屈。神様からすれば「いや、それとこれとは話が別でして…」という感じだろうけど。
不妊に悩むカップルは10組に1組*。不育症の発生率は妊娠女性の2~5%**、周産期死亡は1000人当たり3.7人***。それらがいっぺんに起こる確率を計算して、日本語に訳すとこうなると思う。
「すごく珍しい」。
「すごく珍しい」不幸があったんだから、「すごく珍しい」幸運があってもよかろうという気持ちは分からなくもないけど、残念ながら宝くじと我が家の妊娠事情に因果関係はない。バタフライエフェクトだとか風が吹けば桶屋が儲かる話というのもあるけど、やっぱりちょっとかけ離れすぎてる。
そもそもくじだのギャンブルだのなんて、「親」が得するように作っておかないとそのシステム自体が維持できない。宝くじにいたっては収益の半分以下しか配当されないことは既に公表されている。300円の宝くじの配当期待値は140円程度だそうだ。要するに「買えば確実に損をする」。だから宝くじなんて買わないほうが絶対、賢い。
なんてThe理系男子な理屈は奥さんには全く通用しなくて、結局なんやかんやで毎回買ってしまっているわけだけど、実はボクもあまり強く反対はできない。なぜならボクも奥さんに内緒で似たようなことをしていたから。
あの子が亡くなってしばらくしてから、ボクは毎週こっそり「ミニロト」を買うようになった。宝くじと違ってミニロトは自分で番号を選んで購入する。1から31までの数字を5つ。そこにあの子の誕生日と、流産で亡くなった上の子の誕生日と、奥さんの誕生日を入れて買っていた。
正直、当たっても当たらなくてもどっちでもよかった。どうせミニロトは配当金も、多くて1000万円くらい。ものすごい大金ではあるが人生が変わるほど夢のある金額でもない。それより天使になったあの子たちのために、とにかく何かしたかった。何かで繋がっていたかった。
結局1年ほど買い続けてもミニロトは一度も当たることは無く、そのうちフェイドアウトするようにやめてしまった。でもそうしていたことを無意味だったとも思わない。くだらないことかもしれないけど、多分その時なりに一生懸命、自分の状況と向き合おうとしていたんだろうし、その時のボクには必要なことだったんだろうと思う。だから今は今で、今のボクなりの向き合い方を考えることにしている。それに意味があるかどうかなんてことは、さして重要じゃない。
あ、ちなみにミニロト当たらなくてもいいと思ってたというのはウソです。1000万円当たったら住宅ローンの返済に充てる予定にしてました(笑)。
***厚生労働省人口動態統計
次回は虹のこども「04.てのひらを合わせて」です