20週目に入るころ、ボクたちは久しぶりに不妊クリニックを訪れました。卒業の日には会うことができなかった、あの不妊カウンセラーさんに会うためでした。
奥さんのおなかはすっかり妊婦らしくなってきていたので、無遠慮にクリニックに入ることはできない。奥さんはいかにもマタニティーウェアではない、ブカブカのワンピースを選んで、おなかの前に大きなバッグを抱えて、鏡の前でおなかが目立たないことを何度も確認していました。
クリニックに着いて、面談用の個室でお話ししました。
ココちゃん、おねえちゃんになるんだね。これからは4人家族だね。
そう言ってもらえたことが、なにより嬉しかった。
ココが亡くなって半年後に再び不妊治療に挑む決心をした時、それをココはどう思うんだろうという気持ちは、正直ありました。ココのいない空白を埋めたいわけじゃないと考えることが、何か言い訳がましいような気がしていました。
でもその複雑な気持ちは、時間をかけてココと向き合うことで少しずつほぐれていった。さらに半年後の体外受精の時には、ボクたちはとても穏やかに、こう思っていました。
ココに弟妹を作ってやりたい、と。
べべはココの替わりじゃない。
ベベを待ち望むことは、ココがいない時間を終わらせることじゃない。
可愛いわが子に兄弟を作ってやりたいと思うことは、どんな親でも変わらない。
ごく普通に子どもを授かった人でも、不妊治療でも、死産でも。
自然にそう思えるようになったことは、ボクたちがココのことをわが子として、べべにとっての大切なお姉ちゃんとして、変わることのない家族の一員として、ちゃんと自分たちの心の中に迎え入れることができたということなのかもしれません。
べべが少し大きくなったら、ココのぬいぐるみやお仏壇にいたずらをしたがるかもしれない。その時はべべのことを、本気で一番怒ってやろうと思います。そんなこと、絶対にしちゃいけない。目には見えない小さなお姉ちゃんのことは、ボクたちみんなで大切に大切に守り抜かなくちゃいけない。べべには、しっかりそう教えてやろうと思います。
不妊治療記「不妊カウンセリング」もどうぞ
「10.必殺!4次元超音波」へつづく