自分の体温より高い温度のものを触るとあたたかく感じる。
自分の体温より低い温度のものを触ると冷たく感じる。
では自分のてのひら同士を合わせた時は?両方のてのひらは同じ温度であるはずなのに、やっぱりそれを「あたたかい」と感じます。まるで合わせたてのひらの間に特別なエネルギーが発生しているかのようです。
ダイチの供養とココのお葬式をしてもらったお寺は、水子供養のお寺として地域では有名なところだったので、いつもたくさんの水子地蔵が並んでいました。ボクたちもココのお地蔵を作ってもらい、一緒に祀ってもらっていました。
奥さんが作ってくれた真っ赤な頭巾と前掛け。ひと際オシャレなココ地蔵は、いつもうれしそうに他のお地蔵さんと一緒に立っていました。
他のお地蔵さんも、きっとボクたちと同じように小さな我が子を亡くしたご夫婦がそこにお祀りしたもので、その一体一体に天国への大切な祈りが込められているのでしょう。だからたくさんの水子地蔵が並んだその場所は、天国の保育園みたいだとボクたちは思っていました。
お寺を訪れて、ボクたちはココ地蔵に話しかけます。
ココ、元気にしてる?いつも一人にさせてごめんね。周りのお友達と仲良くするんだよ。親切にしてあげるんだよ。ママのおなかにいる弟妹をしっかり守ってあげてね。
そして、本堂の大きな仏様の前で手を合わせます。
なぜてのひらを合わせるとあたたかく感じるかを科学的に説明することは簡単だけど、そんなことは別にどーでもいい。大事なのはてのひらを合わせて、そのぬくもりを感じた時、確かにボクたちはホッとするということだ。心が少し穏やかになるということだ。
穏やかな心で、ボクたちは祈ります。
どうか、天国の子どもたちがしあわせでありますように。
どうか、おなかの子が元気に産まれてきますように。
このお寺はいつまでも、ボクたち家族の大切な場所であり続けてくれています。
「05.おかえり」へ続く