手術の日のこと

 

べべの手術の日のことを書こうと思う。

 

計画帝王切開で産まれたべべは標準よりは少し小さかったけど、元気に動き、元気に泣き、元気にミルクを飲んでいた。出産直前の、あのヒリヒリするような緊張や不安も日増しに緩んでいっていた。

 

生後5日目。奥さんの術後の回復が順調なら、そろそろ退院が見えてくるはずだったその日。

退院後はしばらく実家で過ごす予定だった奥さんとべべのために、ボクはその日ひとりで実家にベビーベッドやベビーバスやオムツの買い置きなんかを運び込み、それらを綺麗にセッティングしてから、いつものように病院に向かった。

 

いつものナースステーションで面会の手続きをしていると、新生児室の周りがすこしざわついているのに気づいた。新生児室にはべべの他にもたくさんの赤ちゃんがいる。もしなにかあったのだとしても、それがべべである可能性はとても低い。

 

それでも、嫌な予感がした。そしてその予感は当たっていた。

 

新生児室から出てきた主治医の先生が、ボクを見つけて言った。

「あ、ここ村さん。べべくん、昨日から吐き戻しが続いててね…。今、小児科の先生にも診てもらっているところなんですよ」

 

あぁ、やっぱりべべなのか。

 

再び訪れた不安、緊張。病室には奥さんがいた。

 

昨夜は飲んだミルクを全部吐いてしまったこと。今日になってからはぜんぜん飲んでいないこと。新生児にはよくあることだからと様子を見ていたけど、なじみの助産師さん(ココの異変にも気づいたくれた人だ)がやっぱりおかしいと先生を呼んでくれたこと。

 

奥さんから話を聞いて、何が悪かったんだろう、ボクの抱っこの仕方が悪かったのだろうか、ミルクの飲ませ方が悪かったのだろうかなんて考えていた。奥さんもきっと、そんなことを考えているだろうと思った。

 

助産師さんが病室にべべを連れてきてくれた。べべはちゃんと目を開けていたけど、泣くこともぐずることもなく、ただ元気がなかった。小児科の先生の説明では、一時的な症状かもしれないが、大きな腸の病気があるのかもしれない。その場合はすぐにでも手術が必要だが、手術するとなると近くの大学病院に搬送する必要がある。このまま様子をみるか、今すぐ大学病院で精密検査をうけるか…迷うボクより先に奥さんが「すぐに検査してやってください!」と訴え、先生もそれに賛成した。

 

搬送の準備をする間、別の小児科の先生がべべの鼻にチューブを入れる処置をすることになった。

 

「チューブを入れる前に、写真を撮っておかれたほうがいいんじゃないですか?」

 

その先生の言うことが理解できなくて戸惑っていると、

 

「ほら、あの、チューブ入れちゃうとお顔が変わっちゃうから。」

 

親切なのか、心無い言葉なのかよくわからなくてただ、大丈夫です、とだけ言った。嫌なやり取りだなと思った。