手術の日のこと3

 

夜の病院の廊下は人気もなく、緑色の非常灯だけがやたらと目についた。べべが入っていった手術室と、ボクたちが案内された待合室には煌々と明かりがついているのに、それを隔てる廊下が真っ暗なのがなんだか落ち着かなかった。

 

静かで、少し寒い待合室で奥さんと二人、いろんなことを考えた。

 

なにが悪かったんだろう。

どこが悪かったんだろう。

どうしてべべなんだろう。

どうしてまた、ボクたちなんだろう…。

 

感情の波は意外と大きくなかった。不安や緊張に慣れてしまったからか、ただ疲れ果てていたからか。最悪の事態を、ただただ考えないようにしていた。

 

そして手術は終わり、執刀した先生から幸い腸の壊死は起こっていなかったこと、腸捻転を解除して、再発を防ぐ処置をしたことを聞かされた(後から知ったことだけど、その先生は小児外科手術では有名な大学教授だった)。手術室から出てきたべべは人工呼吸器をつけ、両手両足に点滴のチューブが繋がれた状態でNICUに運ばれて行った。むくんだ顔で目は閉じたまま。それでも小さな命で、生きていてくれた。

 

奥さんともとの病院に戻ったのは結局深夜2時過ぎで、手術がうまくいったことを伝えると、夜勤のスタッフさんたちも安心してくれた。そして病室で眠る前、買ってきたショートケーキを食べて二人でお祝いをした。その日(正確には日付が変わる前の日だけど)は、ココの20か月目の誕生日だった。

 

 

いろんなことを考える。

滑り落ちるように、突然なくなっていった命。

粘り強く、手術に耐え切った命。

どこが違ったのか、なにが違ったのか。

もちろん答えはない。

 

それでもあの助産師さんがべべの異変に気付いてくれなかったら、小児科の先生の的確な判断がなかったら、手術を執刀した先生の確かな技術がなかったら、きっと今とは違う結果になっていたはずだ。べべを助けてくれたこと、ボクたち家族を助けてくれたことは何よりもかけがえのないことで、ボクは今もそれをただ、日々ありがたく思うようにしている。

 

 

 


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